divie: タグに基づくビデオシーン検索システム

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増田 智樹
名古屋大学 大学院情報科学研究科
山本 大介
名古屋大学 大学院情報科学研究科
大平 茂輝
名古屋大学 エコトピア科学研究所
長尾 確
名古屋大学 情報メディア教育センター

1 はじめに

近年、YouTube\footnote{http://www.youtube.com/}などの動画共有サービスの出現によって、Web上に膨大な数のビデオコンテンツが存在するようになった。それらのビデオコンテンツの検索や分類のために、タグと呼ばれるメタ情報が広く利用されている。タグを利用することで、コンテンツに関する情報をユーザに対して端的に提示することが可能になり、キーワード単位での検索が容易になる。一般にタグはコンテンツ全体に付与されることが多いが、筆者らが開発したオンラインビデオアノテーションシステムSynvieによって任意のビデオシーンに対するタグの生成が可能になった。そこで本研究では、ビデオシーンに対するタグを利用してビデオシーン単位の検索を行うことのできる、新しい形のビデオシーン検索システムを開発した。

2 タグに基づくビデオシーン検索

本研究では、タグを利用した新しい発想のビデオシーン検索システムを開発した。本システムは、2007年4月から一般公開実験を行っている\footnote{http://video.nagao.nuie.nagoya-u.ac.jp/search/top}。本章では、検索の流れに沿ってシステムについて説明する。

2.1 タグクラウド

トップページには、タグが名詞・動詞・形容詞にカテゴリ分けされ、 それぞれのカテゴリの中では50音順にソートされたタグクラウドが表示される(図)。タグはクリックされると検索クエリ用のテキストフィールドに追加されるため、キーボードを使ったテキスト入力が必要なく、また、複数のタグを利用して検索を行うことが可能である。さらに、タグをインクリメンタル検索することも可能である。インクリメンタル検索とは、絞り込み検索とも言われ、検索キーワードを1文字入力するたびに徐々に検索結果を絞り込んでいく検索方法のことである。具体的には、テキストフィールドに文字を入力することで、その文字から始まるタグのみが表示される。

タグクラウド

図1: タグクラウド

2.2 シークバーを用いたシーン検索

検索結果としてビデオコンテンツのリストが表示される。また、それぞれのコンテンツに対して、シーン情報をブラウザ上で閲覧するための時間軸シークバーとサムネイル画像、タグの一覧が表示される。さらに、シークバー上には検索クエリとして用いたタグに関連のあるシーンがハイライト表示される。シークバーを動かすとそのタイムコードに同期してサムネイル画像が切り替わるため、タグの有無に関わらず、任意のタイムコードに対するサムネイル画像を閲覧することができる。また、サムネイル画像はマウスオーバーによって拡大表示される。さらに、一覧中のタグをクリックするとシークバー上に反映させることも可能である。それらの操作を繰り返してシーン情報を閲覧し、任意のタイムコードからビデオを再生することで、ビデオシーン検索を実現する。ビデオシーン検索を行った画面例を図に示す。タグとサムネイル画像を用いることで、ユーザはビデオコンテンツそのものにアクセスせずにシーンの情報を閲覧することができるため、一般に時間がかかるビデオへのアクセスを最小限にし、効率のよいビデオシーン検索が実現される。

Webブラウザ上でのビデオシーンの閲覧

図2: Webブラウザ上でのビデオシーンの閲覧

3 検索履歴に基づく情報提示

本システムでは、検索履歴に基づいてユーザに対して映像シーンに関する情報の提示や映像シーンの推薦を行っている。

3.1 映像シーン情報の提示

シーン検索の過程において時間軸シークバーが動かされた時、そのタイムコードに関連度の高いタグが表示される(図)。これにより、ユーザのビデオシーンに関する理解を支援している。ここでは、ビデオシーンの視聴と検索クエリとして用いられたタグの履歴から、表示するタグを決定している。

タグによる映像シーン情報の提示

図3: タグによる映像シーン情報の提示

3.2 ビデオシーンの推薦

ビデオを視聴すると、ポップアップウインドウが開き、ユーザに対してシーンの推薦が行われる。図にあるように、視聴したシーンと検索クエリの2種類の情報に基づいてシーンが推薦される。Webブラウザに自動的に設定されるクッキーIDごとの視聴履歴と検索クエリの履歴によって推薦するシーンを決定している。

ハイライト映像は、コンテンツの一部分のみを視聴することでそのコンテンツを視聴するかどうかの判断を支援し、ユーザにとって本当に視聴したいものを効率よく検索する上での支援となる。

ビデオシーンの推薦

図4: ビデオシーンの推薦

4 おわりに

本稿では、タグクラウドとそれによる検索をビデオシーンに適用することで効率よくビデオシーンを検索するシステムの提案を行った。今後の課題として、インタフェースの改善や新たなデータ収集機能の拡張、公開実験によって収集された検索履歴の分析とその利用に関する検討などが挙げられる。