Ubiquitous Talker: 実世界対象との音声言語インタラクション

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長尾 確
名古屋大学 情報メディア教育センター
暦本 純一
株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所

概要

拡張現実感は、実世界に情報空間を重ね合わせようとする研究領域である。ここでの重大な問題は、実世界の対象や状況を認識することである。自然言語処理の領域において、発話された状況や文脈が限定されれば、言語の認識はそうでない場合に比べて、はるかに容易になる。そのため、状況認識機能を持った拡張現実感システムに、頑健な自然言語処理を導入することができる。このアイディアに基づき、Ubiquitous Talkerと呼ばれるシステムを試作した。このシステムは透明なガラスを通してみるように周囲のシーンを映し出す小型の液晶ディスプレイ、カラーコードによってIDの付与された実世界の対象物を認識するカメラ、音声認識用のマイク、合成音声を出力するスピーカから成っている。Ubiquitous Talkerは、ディスプレイと音声によって対象物に関連する情報をユーザーに提示する。さらに、対象物やその周囲の状況に依存した文脈に限定した、音声による質問要求を受け付けることによって、ユーザーが、あたかも対象物そのものと対話することによって情報を取得しているという雰囲気を作り出すことができる。