優先的制約充足法による自然言語解析

PDF
長尾 確
名古屋大学 情報メディア教育センター

概要

この論文では、自然言語文の意味解析に関する新しい手法について述べる。その手法は、構文的あるいは意味的制約を部分的に満たす曖昧な構造を内包した表現を用いている。これは、曖昧な部分をすべて展開して個別の構造を生成してしまうと組み合わせ爆発を起こしてしまうのを防いでいる。この表現は、文の依存構造を基盤として、そのノードに意味表現へのマッピングのときに評価すべき制約を付随させている。曖昧さの解消は、可能な候補(係り受け、格要素、語義など)の集合に構文的・意味的制約を適用していき、制約を満たさない候補を削除していくことによって行われる。もちろん、それだけでは一意に解が求まらない場合が多いので、よりもっともらしい解釈を生成するための新たな知識が必要になる。それをここでは選好と呼ぶ。制約と選好は協調的に用いられ、それらの間の相互作用を考慮する。そのためのアルゴリズムとして、制約伝播アルゴリズムを拡張した、優先的制約充足法を提案する。それは、選好によって、制約の適用の順番を制御するというものである。これによって、文の曖昧さを、組み合わせ爆発を起こすことなく、効率的に解消することができる。